未公開物件なんて本当にあるの?
ただたんに、『未公開』『あなたしか知らない』なんてプレミアム感を持たせる営業トークなんじゃないの?
そんな風に思っている方もいるかもしれません。
結論から言ってしまうと、未公開物件って本当に存在します。
不動産の買取業者の立場として『未公開物件』の査定をしていましたし、プライベートでも『未公開物件』を購入しました。
本日は
- 未公開物件ってどういうこと?
- 売りたいはずなのにどうして未公開なの?
- 未公開物件ってお得なんじゃないの?
こんな疑問にお答えします。
元買取業者としての知識と、プライベートで未公開物件を購入した経験をもとに、わかりやすく解説していきます。
未公開物件を理解する前に不動産取引の一番大切なことを知っておこう
未公開物件について理解するためには、不動産取引の大前提について知る必要があります。
それは仲介業者がどうやって報酬を得ているかという事です。
未公開物件と仲介業者の報酬なんてなんの関係もないじゃない!と思うかもしれません。
けれど実は『なぜ未公開になるのか』という点において、仲介業者の報酬が大きく関わっているのです。
仲介業者は成功報酬
賃貸物件を探しに仲介業者へ行ったことがある人も多いかと思います。
その場合、希望の間取りや場所を伝えると、図面を持ってきてくれたり、いい部屋があれば現地へ連れて行ってくれたりもします。
私たちが希望通りの部屋を見つけるためにあれこれと助けになってくれますが、実はこの時点では仲介業者の利益はゼロです。
なぜなら仲介業者は部屋を貸したい人と借りたい人を引き合わせて(賃貸借契約ができて)はじめて仲介料として報酬をもらえるからです。
売主と買主を引き合わせて、取引が終了してはじめて仲介手数料として報酬を受け取ることができます。
両手と片手
成功報酬である仲介手数料を得る取引には、大きくわけてふたつのパターンがあります。
『両手』と『片手』(『わかれ』ともいいます)の2種類です。
まずは両手の説明をしてみましょう。
家を売りたいAさんは仲介業者Cに住宅の売却を依頼しました。(媒介契約)
数日後、店舗に住宅購入希望のBさんがやってきたので、希望の間取りや場所を聞いたところAさんの家がちょうど良さそう。
早速Aさんの家にBさんを連れていったらとても気に入り、めでたく契約となりました。
この場合は、売主、買主共に仲介業者Cへ仲介手数料を支払うことになります。
このように、売りたい人、買いたい人の両方から手数料を受け取ることを『両手(取引)』と言います。
では片手の場合はどうでしょう。
家を売りたいAさんは仲介業者Cに住宅の売却を依頼しました。(媒介契約)
仲介業社Cは早速販売図面を作成し、販売活動をスタートしました。
すると数日後、仲介業者Dから『Aさんの物件にピッタリなお客さんがいるので、ご案内してもいいですか?』と連絡が来ました。
BさんがAさん宅を内覧したところ、とても気に入り契約となりました。
このように、不動産取引では元付け業者と客付け業者というように一つの物件に対し、複数の業者が仲介することがあります。
元付け(もとづけ)業者
売主から売却を依頼された業者
上記の場合は仲介業者Cが元付け業者
客付け(きゃくづけ)業者
不動産を買いたいという人に対して物件を紹介する業者
上記の場合は仲介業者Dが客付け業者
売主、買主はそれぞれの担当の仲介業者へ仲介手数料を支払うことになります。
このように、売りたい人か買いたい人、どちらかしか仲介手数料をもらえない場合を『片手(取引)』または『分かれ』と言います。
仲介業者は両手を目標に仕事をする
仲介手数料は法律で『契約金額の3%+6万円」を上限に受け取ることができると定められています。
上限さえ守れば報酬は自由に決めることができますが、その上限いっぱいの手数料をもらっている仲介業者がほとんどです。
その報酬を、両手の場合は売主と買主のそれぞれから、片手の場合はどちらかから受け取るとなると、その差は2倍。
ですから当然、仲介業者にとっては両手のほうが旨味が多く、両手を目標に営業活動をしています。
未公開物件を作り出す媒介契約の問題点
未公開物件について深く知るには、もうひとつの不動産取引の大事な要素『媒介契約』についても理解しておく必要があります。
一般的に、媒介契約は家を売却するときにクローズアップされる問題です。
けれど、仲介業者の報酬と同様、仲介業者が情報を『未公開』にしてしまう原因と深く関係してきます。
少しややこしいですがお付き合いくださいね。
媒介(ばいかい)契約とは
売主と買主、貸主と借主など不動産取引の当事者の間に宅地取引業者が入り、取引成立のために活動するという内容の契約。
ザックリ簡単に言うと、報酬を払うから家を買ってくれる人を探して契約が完了するのをサポートしてくださいね、という契約のことです。
この媒介契約には3つの種類があり、売却希望者はその中から自由に媒介方法を選ぶことができます。
媒介契約の3つの種類
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
ひとつずつ説明していきます。
一般媒介『ほかの業者も客付けOK、個人間売買もOK』
世の中に出回っている物件情報の内、一番多いのがこの一般媒介によるものです。
なぜかというと、専属専任媒介や専任媒介と違ってどの仲介業者でも客付けをすることができるから。
家を売りたいAさんは仲介業者Cと一般媒介契約を結び、物件の売却をお願いしました。
なかなかいいお客さんが見つからないようなので、仲介業者Dにも相談し、こちらでも一般媒介契約を結びました。
このように、一般媒介契約は複数の仲介業者と結ぶことができます。
また、自分で購入希望者を見つけて直接取引することもできます。
1か月後、仲介業者Dより『購入希望者から申し込みが入りました。』と連絡をもらい、契約することになりました。
契約当日は、購入希望者のGさんと一緒に仲介業者Hも来ていました。
Aさんは仲介業者Hと一般媒介契約を結んでいませんが、仲介業者Hが見つけたお客さんと契約することができます。
専任媒介契約『ほかの業者は客付け禁止、個人間ならOK』
続いては専任媒介契約について。
Aさんは家を売却するために仲介業者Cと専任媒介契約を結びました。
ところが全然購入希望者が現れないので他の仲介業者にも売却をお願いしようか迷っています。
専任媒介契約の場合は、契約期間中ほかの業者と媒介契約を結ぶことはできません。
つまり契約中に購入希望者が現れれば、仲介業者Cは自動的にAさんからの『片手』を報酬として受け取ることができます。
隣人Eさんに家を売りに出していることを話すと、『ぜひ購入したいわ』と言われました。
そこで、売主Aさんは業者Cに仲介料を支払わずに個人間で取引してしまおうと考えました。
Aさんは仲介業者Cに対して『個人間で売買契約を結ぶことになりました』と連絡したうえ、Eさんに売り渡しました。
このように、専任媒介の場合は仲介業者へ個人間取引をする旨を通知をすれば、自分で見つけた購入希望者との取引が認められています。
専属専任媒介契約『ほかの業者は客付け禁止、個人間売買も禁止』
最後は一番縛りが厳しい専属専任媒介契約です。
契約期間中、他の仲介業者と媒介契約を結べないのは専任媒介と同じです。
家を売りたいAさんが仲介業者Cと専属専任媒介契約を結びました。
すると、隣に住んでいるEさんが『売りに出すならうちが買いますよ』と言ってきました。
専属専任媒介契約の場合は、専任媒介と違って自分が見つけてきた購入希望者と直接取引することはできません。
もしも隣人Eさんが本当に購入する気があるのなら、以下の様手な順を踏むことになります。
- 仲介業者Cに依頼して購入する
- 他の仲介業者に依頼して購入する
- 専属専任媒介契約の期限が切れるのを待ってAさんと直接取引する
Eさんは早速知り合いの仲介業者Dに相談することにしました。
仲介業者Dは元付け業者のCへ購入希望者がいる旨を伝え、取引をすることができるか確認してくれました。
すると、仲介業者Cは『すでに購入を希望しているお客さんがいるので現在はそちらが優先です』と言われてしまいました。
専属専任や専任媒介の場合、元付け業者は購入希望者を自社で探せば『両手』になります。
両手をとりたいがために『囲い込み』と言って、ほかの業者へ物件の紹介をせず情報を独占してしまうという仲介業者もいます。
このような元付け業者による『正当な理由』のない物件紹介拒否は現在禁止されています。
けれど、『売主さんが出張中』『売主さんと連絡が取れない』など色々な理由を使って、囲い込みを続ける業者が少なからずいます。
実はこの『囲い込み』行為が未公開物件を作り出している場合があります。
媒介契約を結んだ場合の仲介業者の義務とは?
ここまで読んでいただくと、当然疑問がわいてくると思います。
専任専属媒介契約って、面倒な縛りばかりでデメリットしかなくない?
ここまで売却希望者の規約しか書いてきませんでしたが、実は媒介契約の種類によって仲介業者側にも義務が生じてきます。
売却希望者と専任または専属専任媒介契約を結んだ場合は、レインズという不動産情報を共有するシステムに物件の概要を登録しなければいけません。
客付け業者は訪問客や問い合わせがあれば、レインズから物件を検索し紹介します。
このレインズへの登録義務が、一般媒介は義務なし、専任は7日以内、専属専任は5日以内と順に厳しくなります。
また専属専任の場合は、チラシや自社サイトなどの反響もこまめに売却希望者へ報告しなければいけません。
未公開物件ってなんなの?
さてお待たせしました。
いよいよここから未公開物件について切り込んでいきます。
未公開物件とは、その字のごとく公開していない秘密の物件のことですが、大きく分けてふたつの種類があります。
未公開物件のふたつの種類
- 他の仲介業者に公開していない物件
- エンドユーザー(物件を探している人)に公開していない物件
このふたつには『誰に』公開していないのか?という違いがあります。
他の仲介業者に公開していない未公開物件
仲介業者は自社が元付けでない物件情報でもレインズを検索して、客付けとして報酬をもらうことができます。
そのため多くの仲介業者は毎日新しい物件が登録されていないか、レインズをみてチェックします。
つまり、レインズに情報を登録した時点で日本全国の仲介業者へ『公開』したことになるわけです。
それまでに自社で客付けしている間は完全な未公開物件ということになります。
完全未公開物件とは
レインズに登録していないため自社しか情報を握っていない物件のこと
完全未公開物件になるケースは以下の場合が多いです。
- レインズの登録期日まで自社販促する
- 一般媒介契約でレインズに登録しない
- 売主が買取業者
- レインズを使っていない
- 元付けに売る気がない
- 任意売却案件
レインズの登録期日まで自社販売したいから未公開物件
仲介業者CはAさんから売却の依頼を受けて専任媒介契約を結びました。
レインズへの登録義務は7日間なので、期日までにまずは物件にマッチしそうな見込み客へ連絡してみようと考えています。
登録期日までに自社で客付けできれば、めでたく『両手』取引となります。
専任や専属媒介の場合はレインズへの登録が義務化されているので完全未公開の期間がとても短くなります。
一般媒介契約でレインズに登録しないから未公開物件
仲介業者CはAさんから売却の依頼を受けて媒介契約を結ぶことになりました。
物件の概要を聞いてみると、人気のエリアの築浅の物件なのですぐに購入希望者は現れそうです。
『ぜひ専任媒介契約を』とお願いしましたが、『色々な人に見てもらいたいので一般媒介で契約したい』と言われました。
初めて仲介業者へ売却の相談へ行き、売りに出したばかりだしとりあえずは浅く広く、一般媒介でいろんな業者さんに販売活動してほしい。
Aさんはそう考えているわけです。
仲介業者Cがレインズへ登録するなど販売活動を始めたら『公開』され、日本中の仲介業者がAさんの物件情報を閲覧することができます。
このように初めて家を売り出す顧客と一般媒介を結び、レインズへ登録しない場合も完全未公開物件となります。
売却希望者にとっては幅ひろく情報を認知してもらうためには、絶対にレインズに登録してもらうほうが得です。
けれど、不動産取引の知識がない売主へ詳しい説明もせずに、『あえて』一般媒介で契約してレインズに登録しないという仲介業者もいます。
売主が買取業者だから未公開物件
Aさんはなかなか家が売れなかったので買取業者に買取してもらうことにしました。
買取業者はAさんの家をきれいにリフォームし、再販することにしました。
買取業者にはこのように、リフォームをして付加価値をつけ再販するという業者がいます。
当然『売主』として売りに出すので、ここであえてレインズへ登録しないで自社で販促するというケースがあります。
期間限定で販促してみて、買い手がつかなかったらレインズへ登録したり仲介業者と媒介契約を結んだりします。
レインズを使っていないため未公開物件
買取業者で働いている時は、物件の情報をもらうためにしょっちゅう仲介業者へ挨拶まわりをしていました。
全国展開の大きな不動産屋だけでなく、何代も前から地元で商売をしているような小さな不動産屋まで。
古い小さな不動産屋だと、レインズなんて使わずに地元の地主から案件をもらって賃貸の管理や売買をしているところがあったりします。
『なにかいい情報有りませんか?』
と聞くと
『ちょうどこないだコレ売ってくれって〇〇さんに頼まれたんだよね』
なんて、物件資料を見せられたりするわけです。
こんなふうに、レインズを使わずに店頭に図面を貼ったり、人脈を使って売買するという昔ながら(?)の不動産屋もあります。
元付けに売る気がないから未公開物件
売却の相談をされたものの、元付け業者が弱腰で最初から売る気がないとかたケースがあります。
- 引っ越し時期が未定
- 築浅なのに重大な瑕疵(雨漏りなど)がある
- 権利関係が複雑すぎる
- 事故物件
- ゴミ屋敷
- 売主が精神的に不安定
『ちょっと訳ありなんですよね~』と買取業者案件になるパターンが多いです。
最初から知り合いの買取業者へ流そうと思っているのでわざわざレインズなどに登録せず、そのまま査定を依頼してきます。
任意売却案件だから未公開物件
任意売却ってなに?という方はこちらの記事をご覧ください。
プライベートで中古住宅を2軒買いましたが、実は2軒とも任意売却案件でした。
そのうち1件は完全未公開物件です。
任意売却は簡単に言うと、住宅ローンやそのほかの借金で家を差し押さえられてしまった人が競売を回避するための手段。
- 管財人や債権者から、懇意にしている仲介業者へ直接売却依頼される場合
- 任意売却専門の業者が債務者に売却を逆アプローチしてくる場合
このようなケースは完全未公開の場合が多いです。
私が実際に未公開の中古住宅を購入した体験談についてはこちらをご覧ください。
エンドユーザーに公開していない未公開物件
元付け業者が登録したレインズの情報をもとに、客付け業者はWEB掲載、折り込み広告掲載など営業活動を始めます。
つまり、客付け業者によってエンドユーザー(購入希望者)に公開されるわけです。
けれどその際に、客付け会社がWEB上に載せたりチラシを作ることを禁止している物件があります。
このように、レインズに登録され業者間では公開されているけれど、不特定多数のエンドユーザーには公開禁止の未公開物件があります。
未公開物件とは
業者間では公開されているけれど、元付けや売主の事情でエンドユーザーに公開されていない物件のこと
未公開物件になるケースは以下の場合が多いです。
- 元付け業者の囲い込み
- 近所の人に知られたくない
元付け業者の囲い込みで未公開物件
何度もこの記事には書いていますが、仲介業者はなるべくなら両手にしたいと考えています。
そのため、上にも書いたような囲い込みをする業者がいます。
中にはレインズに登録する元付けの販売図面に『勝手に』広告禁止と書いてしまう仲介業者もいます。
近所の人に知られたくないから未公開物件
近所の人に売りに出しているのを知られたくないから大々的に宣伝しないでほしいというケースがあります。
- まとまった現金が必要
- 離婚や別居による売却希望
- 分譲マンション
分譲マンションで売り出し中の部屋が複数ある場合、あまりにも希望売却価格が高いからほかの人に知られたくない、というパターンもあります。
チラシやWEBには載せていないけれど、元付けでも客付けでも問い合わせや来店客には紹介してくれます。
未公開物件がお得な掘り出し物件というわけではない【本当に価値ある未公開物件とは】
最後まで読んでくださってありがとうございます。
『未公開物件ですよ』なんて言われると、ポータブルサイトやチラシには載っていない誰も知らないお得な物件なんじゃないかと思ってしまいます。
もしくは、今のご時世に未公開だなんてそんなの嘘だろうという人もいるかもしれません。
けれど実際にはいろんな理由で『未公開』にされていしまっています。
つまり何が言いたいかというと、ただ『未公開』なだけであって、それは物件の価値や価格や状態には全く関係ないということです。
本当に価値のある未公開物件とは
- 事情があって相場よりも安く売っている
- 人気があるから元付け業者が情報を握っている
このような未公開物件です。
『誰』の『どのような思わく』で未公開になっているのかを探るために、仲介業者に売却理由をそれとなく聞いてみましょう。
とにかく安いお得な未公開物件を知りたい
売主さんの事情で未公開の場合は、値段が下がったり融通が利く場合が多いです。
特に離婚、任意売却案件のように早く現金化したいという場合は経験上値下げしてもらえることが多かったです。
このような場合はレインズには情報が出回っていることが多いので、基本的にはどこの仲介業者でも紹介してもらうことができます。
とにかく人気のエリアの希少な未公開物件が知りたい
人気エリアや築浅の物件などは元付け業者が未公開にしている場合が多いです。
このような完全未公開物件の場合はレインズに載っていない場合も多いので、いろんな仲介業者に行かないと出会えないかもしれません。
次回は、未公開物件の探し方について書いていきます。