家を売りたいから不動産屋さんに査定をしてもらうんだけど、少しでも高い査定額を出してもらうためにはどうすればいい?
先日、ある友人からこのような相談をされました。
私が以前、住宅買取業者で営業として働いていたこと、現在は住宅に関するブログを書いている家マニアだということ知っているからです。
友人は家を売って新たに土地を購入し、注文住宅を建てたいとのことでした。
けれど大きな問題がひとつ。
住宅ローンがまだ残っているのです。
だから、なんとしてでも家を高く査定してもらいたいというわけです。
『高い査定額を出してもらって1円でも高く売ってほしい』
家を売りたいほとんどの人がこう思うわけですが、実はこの考え方は半分正解で半分不正解なんです。
不動産屋の査定とは、家を高く売るための第一歩ではありません。
今日は、初めて家を売る人が勘違いしがちな不動産屋の査定についてを解説しつつ、売主がまずやるべきことを書いていきます。
家を売りたいなら査定の本当の意味をよく理解しよう
家を売りたいと思ったら、ほとんどの人がまず不動産屋へ相談するのではないでしょうか?
CMで見たことのある大手の不動産屋?
それともたまたまチラシに入っていた近所の不動産屋?
知り合いに紹介してもらう、という人もいるかもしれません。
そのほかにはネットの一括見積を出してみようか悩む人もいるかもしれません。
電話やメール、あるいは直接、家の状況などを伝えたうえで
『ではご自宅を査定させて頂きます。』
という流れになるのが王道の住宅売却の流れになります。
実はこの査定に関する考え方が、家の売却にはとっても大切になります。
家の査定は車の査定と一緒?
不動産業界の査定をわかりやすく理解するために、車の査定と比較してみます。
例えば中古車業界大手のガリバーで査定を受けようとしましょう。
ガリバーで中古車を売却するには次のような流れになるそうです。
出典:Gullver
お問い合わせをして車種や年式、走行距離などを伝えると、まずは大体の買取価格を教えてくれます。
その値段に納得できそうならば、実際に車を見てもらい最終的な査定額を決定してくれるそうです。
ネットで一括見積してもらうという人もいるかもしれません。
出典:カーセンサー
こちらはCMや雑誌でよく見かける中古車一括見積サイトのカーセンサー。
査定をしてくれる店の数が増えるという事以外はガリバーの売却の流れとほぼ同じです。
ここまで見ると、家の売却のパターンととてもよく似てますよね。
問い合わせ、机上の査定、現物を確認して査定、という流れになります。
だけど、家の査定と車の査定、実はこのふたつには決定的に違うものがあるのです。
家の査定額とは不動産屋が売りたい金額
家と車の査定の違い、それは査定額を出す人が買主か、そうでないかです。
つまり、車の査定額を決めるのは、その車を買いたいと思っている中古車屋です。
家はどうでしょう。
査定額を出す不動産屋は家を買ってはくれません。
(※ここでいう不動産屋とは、仲介をしてくれる不動産屋です。)
不動産屋が『この価格ならきっと売れるだろうな』という価格が査定額というわけです。
このように、家の査定額は買主ではなく、その家を売るための販売活動をする不動産屋が決めます。
つまりは、ぶっちゃけていってしまうと、家の査定額というのは家の価値そのものではなく、不動産屋が売りやすい金額なのです。
ここがまず一つ目の大事なポイントになります。
家を売るときの心得①
家の査定額とは不動産屋が売りやすい金額のこと
家を売りたいなら査定額の裏事情を知っておこう
家が売れるであろう金額として出た『査定額』ですが、実は物件によっては様々な裏事情が隠れている場合があります。
査定を出す前に、この裏事情を知っているかどうかは大切なポイントになります。
なぜなら裏事情に対抗して、家を少しでも高く売る対策をしておけるから。
では、順番に見ていきましょう。
築25年で家の価値がほぼゼロ
不動産屋は査定額を決めるときに金額を決定する『根拠』を集める作業をします。
具体的にいうと例えばこんな感じ。
- 登記簿との相違はないか
- 家や土地の瑕疵はないか(※後述)
- 所有権や抵当権など権利関係の整理
- 再建築の時に懸念される要因はないか
- 近隣の中古物件との価格のバランス
- 近隣の新築物件との価格のバランス
- 直近の販売事例
- 路線価や公示価格
新築物件との価格バランスは、売りやすさを左右する重要な要素です。
同じような土地の広さ、家の大きさの新築の値段よりも高くなってしまうとなかなか売れないからです。
同じような立地条件の場合、土地の価値は新築も中古住宅も同じです。
となると、家の価格を下げて総額を減らしていくことになります。
中古戸建住宅の価値の目安
悲しいけれどこれが中古戸建の現実です。
家を売るときの心得②
家の価値は築年数と共に下がり続け、築25年でゼロになる
売主の売りたい金額では売れない
査定に伺うと、家のいいところを一生懸命アピールしてくださる売主さんがよくいらっしゃいます。
自分が購入した時にはこんなにこだわって、こんなに高かったんだからそれなりの数字を出してね、というわけです。
けれど、中古住宅の査定の場合は家のいいところを見つけるのではなく、短所を見つけていると思ったほうがいいかもしれません。
『お風呂が古くて使いづらそうだからここはマイナスポイントだな』
とはなっても
『お風呂がリフォームされていてきれいだから査定額アップしよう』とはなかなかなりません。
(ただし、眺望などその物件にしかない長所の場合はプラス査定になる事もあります。)
もちろん、目の前に売主さんがいればきれいなお風呂を褒めるし、お風呂が古いからと言って査定額が極端に下がるわけではありません。
(ひどく汚れていたり、壊れているときにはマイナス査定になる事があります。)
このように、家の査定は減点方式のため、売主が期待している金額よりもかなり安いということが多々あります。
家を売るときの心得③
家の査定は減点方式が基本
最終的な売買代金が安くなることがある
ここまで読んでくださった読者の皆さんに、さらに追い打ちをかけるような内容で申し訳ありません。
けれど、不動産業界においてはよくある事です。
『指値』(さしね)が入ることがあります。
指値とは
「いくらだったら購入したいです。」と金額を指定して値引きをお願いすること
冒頭の友人のように、住宅ローンの残債が残っていて、さらには査定によって期待していた金額より全然安い金額で売りに出したとしても
「あと〇〇万円安かったら購入したいという希望者がいますがどうしますか?」
となる事があります。
このように、販売している値段よりもさらに安くなってしまう場合があります。
家を売るときの心得④
値下げをお願いされることがある
売る気がない、売れる自信がない営業マンがいる
家の場合、目で見てすぐわからない『瑕疵』(かし)というものがあったりします。
瑕疵とは
家の欠点や欠陥のこと
代表的なのは雨漏りやシロアリ、そのほかにも複雑な権利関係、違法建築、精神的な瑕疵というものもあります。
そのような問題物件でも、不動産屋が査定をするからには金額を出さなければいけません。
車のように、査定をする本人が買主の場合は『そんな古い車は買い取れません』とお断りすることができます。
けれど買主ではない不動産屋の場合は、査定をした物件を誰かが購入することよってはじめて報酬を得られます。
利益を得たければ、瑕疵となっている問題を解決させるか、そのままでも良しとしてくれる買主を探さなければいけません。
このようないわゆる訳あり物件は、担当者によっては初めから売る気がなかったり売れる自信がない場合があります。
住宅買取業者とは
中古住宅を購入後、転売する業者のこと
そのまま転売するほかリフォームして付加価値を付け再販売したり、更地にしてから分譲するなどパターンは色々。
そのような営業の場合、査定の段階で住宅買取業者(※)へ回そうと考えている人が多いです。
事実、そのような営業がいてくれるおかげで買取業者は『売れない家』の情報を不動産屋から紹介してもらうことができます。
売主さんには販売活動をしていると見せかけ、裏ではせっせと買取業者に買取の打診をしているわけです。
私は再販する買取業者へ勤めていましたが、買取物件の情報の95%は仲介業者さんからの紹介でした。
残りの5%が管財人や弁護士、そして売主さんが直に相談をされるケースです。
家を売るときの心得⑤
担当者や物件によっては、最初から業者への販売を視野に入れている場合がある
査定額が高くても意味がない
『どこの不動産屋へ行けば査定額を高くしてくれるかな?』
『相見積もりをとったら査定額が高くなるのかな?』
冒頭の友人から実際に相談された内容です。
不動産屋によっては他よりも高額な査定額を提示しているところもあるかもしれません。
また、大手ハウスメーカーで建てている場合、スムストック査定(※)という評価方法を採用するため割高な査定になる事があります。
スムストック査定とは
大手ハウスメーカー10社で設立した『一般社団法人 優良ストック住宅推進協議会』による査定のこと。
- 十分な耐震性
- 適正なメンテナンスや修繕
- メンテナンスや修繕の記録
この3つがスムストック査定の条件になっている。
簡単に言うと、築年数に関係なく家自体の適正な価格を判断する査定のこと
とにかく、不動産屋によっては
うちの会社で仲介を頼んでくれればこれだけ高い査定額にしますよ
となる場合があるわけです。
高額な査定だからと言って、その値段で売れるとは限りません。
その値段を払ってもこの家を買いたい!という人を見つけられればラッキーです。
けれど、たいていの場合は『相場』に合わせて徐々に値引きしてくことになる事が多いです。
無意味な高額査定を提示してくれる不動産屋よりも、提示した査定額で売り切ってくれる不動産屋を選びましょう。
家を売るときの心得⑥
根拠のない無駄に高い査定額よりも、営業力や提案力で不動産屋を選ぶべき
売りにくい家がある
瑕疵とまではいかなくても不動産屋が売りづらいな、と感じることもあります。
少し例を挙げてみます。
- 居住中の物件
- ゴミ屋敷
- 手入れが行き届いていない
- 動物臭、生活臭がある
- 環境が悪い
それぞれ簡単に説明しましょう。
居住中の物件
居住中の場合は内覧をする場合、売主さんが在宅している日を聞いて日程を調整しなければいけません。
ほぼいつでも自由に内覧できる空き家に比べて手間だと感じる不動産屋もいます。
ただでさえ生活感が出てしまう中古住宅の場合、家具や荷物が置きっぱなしという状況は、お客さんを案内するうえでも不利になります。
また、売主さんがいる手前、クローゼットの中などプライベートな場所をじっくりチェックできないところが買主側から見てもデメリットです。
ゴミ屋敷
ゴミ屋敷の概念は人それぞれですけれど。
中古住宅の場合、少なくとも私が感じるゴミ屋敷物件は次のケースでとても多かったです。
- 親が亡くなって相続した
- ながらく空き家だった
- ローンが払えない
家を探している人がそこに住みたいと思えないような物件は、不動産屋も胸を張っておすすめできないですよね。
手入れが行き届いていない
例えばクロスの汚れや剥がれ、設備の故障など入居後に大規模なリフォームが必要、というような物件は売りづらいです。
- リフォームが終わるまですぐに入居できない
- 家の購入費とは別にリフォーム代がかかる
など買主側のデメリットが大きいからです。
リフォーム代や時間をかけてもいいからこの家に暮らしたい!というお客さんや、その立地に価値を見出しているお客さんを見つけなければなりません。
動物臭、生活臭がある
意外と家のにおいって気になります。
空き家ならいいかというとそういうわけでもありません。
適度に換気をしないとこれもまた臭います。
特にトイレは、長期間流していないと排水管のトラップの中の水が蒸発して下水のにおいがもろに上がってきてしまいます。
環境が悪い
ここでいう環境の悪さとは、売主が努力しても改善できないよう環境の悪さです。
私が今まで経験したなかで、環境が悪くて売りづらいと感じた物件をいくつか挙げてみます。
- 家の隣が暴力団の組事務所
- 家の隣がゴミ屋敷
- 家の裏が巨大な鶏小屋
- 敷地の中に別の所有者のお墓がある
このような売りにくい物件の場合は、土地として売る、相場よりかなり安くするなど売り方に工夫が必要です。
家を売るときの心得⑦
売りにくい物件は売り方を変えていく必要がある場合もある
(つまりは提案力や営業力のある担当者でないと難しい。)
家を売りたい人が媒介契約をする前にやるべきこと【家を高く売る第一歩】
ここまで読んでいただき、不動産屋の査定とはどういうものかを十分理解していただけたのではないででしょうか。
家の査定とは、家そのものの価値をはかるものではありません。
不動産屋が数か月で売れるであろう金額、またはあえて値段をつけるなら、と出した数字にすぎません。
大前提として、販売金額を最終的に決めるのは売主です。
冒頭で『高い査定額を出してもらって1円でも高く売ってほしい』が半分正解で半分不正解と書いたのを覚えているでしょうか?
査定額が2,000万円だったとしても、自分は絶対3,000万円がいいというのなら3,000万円で売りに出してもいいわけです。
つまり高く売れるかどうかは査定によるものでもなんでもなく、必要なのは少しでも高く売れる(指値をされない)工夫をすることなのです。
不動産屋の査定がどういうものかを理解したうえで、媒介契約(※)を結ぶ前にやるべきことをまとめていきます。
媒介契約
売主に代わって販売活動をする代わりに、売却が成立したら報酬をくださいねという契約のこと
最低価格を決めておく
家の売却にはいろいろな事情があります。
- まとまった現金が欲しい
- 相続したため現金化したい
- 引っ越ししたい
- ローンを払うのが苦しい
それぞれの事情の中で、まずはお金に関するシミュレーションを事前にしっかりとしておきましょう。
そのうえで、これ以下には下げないというボーダーラインを決めておくことをおすすめします。
物件によっては、指値の引き合いが多い場合があります。
担当の営業マンに○○万円値下げすれば売れそうですよと言われ、心が揺れてしまう事もあるでしょう。
初めの段階で『〇〇〇万円以下にはしません』としっかり意思表示をしておくといいかもしれません。
不動産屋が売りやすくなる工夫をする
査定を終え販売金額が決定し、不動産屋と媒介契約を結ぶと早速販売活動が始まります。
媒介契約の種類によって細かな違いはありますが、販売活動が始まると物件の売り出し情報が全国の不動産屋へ周知されることになります。
つまり、お願いした不動産屋だけでなく、色々な不動産屋があなたの家の情報を見て、自分のお客さんに紹介するわけです。
なので、どの不動産屋がお客さんを連れてきても販売活動しやすいような『感じのいい家』にしておくことが大切です。
住宅買取業者が中古住宅を再販売する時の工夫を少しご紹介します。
- たまに現地に行き換気と見回りをする
- 草むしりをする
- トイレや洗面台など水回りの水を流す
- 掃除をする
- 消臭剤を置いておく
- トイレに掃除済みの紙を貼る
- リフォームや修繕の記録があればファイリングしておく
- エアコンや給湯器などの説明書をファイリングしておく(コピーでもOK)
その他にも可能ならば物を運び出して生活感を感じさせないようにすることも効果的です。
こんな紙を作ってトイレや洗面台に貼っておくと清潔に見えます。
居住中の場合は、家が売れたら引っ越しすることになるのですから、片付けをして家がすっきり見えるようにしておきましょう。
買取業者の査定額を聞いておく
あまりにも家が古かったり問題が多かったりする場合、住宅買取業者が購入を持ち掛けてくるパターンがあります。
業者が買い取る、というと安く買い叩かれるんではないかと身構える方もいるかもしれません。
確かに実際のところ、チラシに載っている販売価格からさらに指値をされることになるでしょう。
けれどもしも不動産屋(仲介業者)を間に挟まず、直接業者に買取してもらうとしたら?
その場合は仲介手数料がかからないのです。
なので、築20年以上の物件の場合は、まず買取業者へ直接査定をしてもらうのもアリです。
業者へ売るメリット
- ローンが通らなくて契約が白紙になることがない
- 売却成立までのスケジュールがスムーズ
- クレームがない
- 残置物ごとの買取がOK
- 色々と融通が利く
- 仲介手数料がいらない(直接取引の場合)
正直なところ、金額さえ納得できれば業者へ売る場合のメリットはかなり大きいです。
相手はプロなので契約決済完了までのスピードも速く、途中で契約がひっくり返るということもほぼありません。
買取業者の査定額は中古車屋が出した査定額と同じです。
家の本当の価値にきわめて近い数字になります。
そして、重要なポイントはその値段なら絶対に買ってもらえるという点です。
その金額で実際に売るか売らないかは別として、ひとつの数字として業者の査定額を知っておくメリットは大きいです。
家を売るときの心得6箇条と今すぐやるべきこと3つ【まとめ】
まずは家を売るときに心得ておくべき7箇条からおさらいします。
家を売るときの心得6箇条
- 家の査定額とは不動産屋が売りやすい金額のこと
- 家の価値は築年数と共に下がり続け、築25年でゼロになる
- 家の査定は減点方式が基本
- 値下げをお願いされることがある
- 担当者や物件によっては、最初から業者への販売を視野に入れている場合がある
- 根拠のない無駄に高い査定額よりも、営業力や提案力で不動産屋を選ぶべき
- 売りにくい物件は売り方を変えていく必要がある場合もある
これが戸建売却の現実です。
この現実を踏まえたうえで、値下げをされないような工夫をしましょう。
後からもう少し高く売れたかも、と後悔しないために今できることは以下の3つです。
最低価格を決めておく
不動産屋が売りやすくなる工夫をする
買取業者の査定額を聞いておく
以上、この3つはぜひ不動産屋と媒介契約をする前にしておいてくださいね。
特に業者の査定額を聞いておくと、販売期間が長くなってしまった場合も気持ちが安定するはず。
事情があって売り急いでいる場合は、ちっとも売れる気配がないとストレスになってしまいますからね。
こちらのサイトでは、仲介業者だけでなく買取業者もまとめて一括査定してくれるのでおすすめです。
>>いえカツLIFE
買取業者の一括査定サイトって珍しいですよね。
出典:いえカツLIFE
こんな風に今話題のリースバックの査定もしてくれるんですって。
リースバックとは
リースバック専門の業者に売り渡した後、新たな持ち主となる買主に賃料を払って住み続けること
これはなかなか面白いサイトですね。
家を売りたいなら是非、業者の買取査定額もチェックしてみてくださいね。
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