第5弾の記事になります。
まだご覧になってない方はこちらの記事からどうぞ。
前回の記事では、とうとうAさんと契約書を交わすところまでいきました。
ここまでくれば、あとは一気に話が進みます。
なにしろ、任意売却は段取りと根回しが重要。
契約まで話をもってくれば、ほぼ取引はうまくいったようなものです。
隣の土地は借金してでも買え
我が家の隣地買収計画は、無事取引終了を迎えることができるのか?!
物語を読んでいる感覚で、サラッと読んでいたけるとうれしいです。
隣の土地は借金してでも買え【取引終了まであと4日】不安
引っ越し代の50万円を現金でAさんに支払ったのだから、そろそろ荷物を運び出したりするんじゃないか?
淡い期待を胸に、カーテンの隙間から隣家の様子を覗き見るわたし。
そんなドキドキをよそに、わがままばかりでなかなか引っ越し先が決められないAさん。
そして未だに部屋の片付けてもしていないという無気力M。
約束の引っ越し期日まであと3日。
決済の前日までには出て行ってもらうことを約定書で約束しています。
もし決済当日まで明け渡しができなければこの契約は白紙撤回に。
となると、ここまでのおひょいさんの苦労はすべて水の泡。
不動産屋の仲介手数料は成功報酬なので、取引が成立しなければ報酬はゼロです。
契約から3日ぶりに、決済の打ち合わせで我が家に来たおひょいさんは
そう、ひとことだけ言い残し、ブロック塀1枚隔てた『自堕落な館』へとひとりで乗り込んでいきました。
ほのぼの系のおひょいさんの息子氏と、最近受けた健康診断の話や腰痛の話などでお茶を濁しつつ、おひょいさんの帰りを待ちます。
30分くらいたった頃
「すべてきれいに片付きましたよ。」
と、いつも通りジェントルマンかつ穏やかにおひょいさんが帰ってきました。
「何も問題はありません。
明日には引っ越し先も決まるでしょう。
そして明後日にはすべてが解決しているはずです。」
不安いっぱいではありますが、とにかくここはおひょいさんの言葉を信じるしかありません。
隣の土地は借金してでも買え【取引終了まであと3日】変貌
その後、おひょいさんの言う通りになったのは言うまでもありません。
どうやってあの無気力な二人を説得したのかはわかりません。
ただ、
「不動産屋のじーさんに、すげー怒られてさ~
仕事行ってる場合じゃねーだろってんだもん。まいっちゃうよな。
でもいうこと聞かなきゃヤベーことになるからさ~。」
というAさんの話を聞く限り、老獪なおひょいさんのことですから、私の知らない別の顔があるのかもしれません。
この日の夜に、Aさんは洗剤が入った紙袋を持って我が家を訪ねてきました。
「今までどうもね。
家買ってくれるって人が出てさ、引っ越し決まったんだよ。
明日!もう明日出てっちゃうからさ、これ使ってよ。お世話になったから。」
ようやく光が見えてきました。
隣の土地は借金してでも買え【取引終了まであと2日】決着
今までのゴタゴタは何だったのか、という勢いで物事が進んでいきます。
おひょいさんの圧力がどれだけのものだったのか、聞いてみたいような、怖いような。
とにかく決済まであと2日。
「Mが出てく金がないって泣きつくからよ~
仕方ないから俺があいつに20万くれてやったんだよ~
しょ~がね~じゃん、俺が面倒見なきゃよ~」
と男気溢れる一言を残し、期日ぎりぎりで、約束通りAさんとMは最低限の荷物だけを軽トラックに詰め込みどこかへ行ってしまったのです。
隣の土地は借金してでも買え【取引終了まであと0日】驚愕
任意売却では普通の不動産売買と同じように、ローンを組む銀行の一室を借りて決済を行います。
所有権移転登記も一般的な売買と同様、司法書士にお願いします。
競売の場合は、所有権の移転登記は裁判所がやってくれます。
ローンの実行を確認して、売主買主それぞれの支払いを済ませたら、鍵をもらってめでたく取引完了です。
当日、私たちは少し早く銀行についたので、カウンターの前の椅子に座って待っていました。
すると、Aさんが銀行に入ってきました。
もちろん、私たちはAさんが今日、この銀行に来るのはわかっていたので
と声をかけました。
するとAさんは
「あー!こんにちは!
いやね、ここで今日、決済やるんだよ~
この銀行使ったことないから、通帳作んなきゃいけなくてさ。
ちょっとごめんね、急いでるからさ!」
と言い残して窓口へ行ってしまいました。
・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・・!!!!
Aさんは、決済日当日でも私たちが購入者だということに気がついてなかったのです。
この銀行は職場の取引銀行のため、自宅からはすこし離れた場所にあります。
もちろん隣に住んでいるAさんも同様です。
こんな辺鄙なところにある銀行でバッタリ遭遇しても、Aさんは何も不審に思わない様子でした。
だって、契約書の署名欄って売主と買主、同じページにありますよね?
契約書にも重要事項説明書にも、甲と乙の説明がそれぞれあって、名前もそのときに出てきますよね?
住所だって書いてるんですから。
もちろん、ちゃんとおひょいさんの息子氏は契約のときに読み上げていると思います。
売買代金のすべてを税金と保証会社にとられてしまうとはいえ、仮にも不動産の売買なんですから!
Sハウジングと、役所の人と司法書士と保証会社K
それぞれ登場人物がそろったところで、適当に挨拶を交わしながら入室。
そこでようやくAさんが、ハッとした顔になって
「え~?!もしかして買ってくれたのって、あさみ家さんなの~?」
と、素っ頓狂な声でびっくりしておりました。
銀行の担当者も含めAさん以外の全員、地続きの隣の家である我が家が購入することをしていたので
「えーーー!?知らなかったんですかーーー???」
となったのは、言うまでもありません。
結果的に言えば、競売での入札可能な最低価格(最低入札価額)よりは高くつきましたが、市場よりも安く買うことができました。
はじめから家を解体して庭にする予定だったので、家の中がどうとか、リフォームにいくらかかりそうだとか。
そういうことを考えなくてよかったので、我が家にとってもSハウジングにとっても比較的楽な案件だったと思います。
もちろん、Sハウジングには仲介手数料を支払いました。
保証会社や役所、占有者M改め無気力Mや、最後まで不思議な隣人Aさんなど。
プロフェッシャルな交渉をしていただき、こんなに少ない手数料では申し訳ないと思うほどでした。
隣の土地は借金してでも買え【後日談エピソード1】天然
後日談として。
最初に競売の話を教えてくれた母の友人の小料理屋には、引越しをした今でもAさんは通っているそう。
ここには同居している母もちょくちょく行っているのですが、兼ねてからAさんに会うと毎回
「はじめまして~
近所なんですか~?
俺んちもね~、近所なんすよ~」
と言われるそうです。
と、心の中で毎回突っ込んでおきながら
「あらそうですか~」
と、知らんぷりするそうです。
任意売却が終わった先日も、小料理屋でばったりAさんに会ったそうです。
「はじめまして~・・・」
とお決まりのセリフが始まって
「近所に住んでたんだけどね~
隣の人がすごい親切でさ~
競売になりそうで困ってて、ちょくちょく愚痴言ってたら買ってくれたんだよ!うちを!」
と、言われたそうです。
もちろん、小料理屋のママも事の顛末をすべて知っているので、母と二人で笑いをこらえていたら
「そういえばさ~
ちゃんと隣の旦那にお礼いってなかったよー。
今から電話して呼んでみるわー。
奥さんにも紹介してやるよー。ほんと、いい人だから~」
と主人の携帯に電話し始めたのを見て、母がすかさず
「なんだか面倒くさそうだから、断ったほうがいいかもよー」
と私に電話。
あれだけ懸念していた取引後のトラブルも、天然なAさんならではの感覚でしょうか?
いつのまにか、困っているAさんを我が家が助けてあげた、となっているようで、すべては結果オーライです。
隣の土地は借金してでも買え【後日談エピソード2】不変
後日談のそのまた後日談。
その日はたまたま主人が不在で、こんな時間になんの話だろうとちょっと怖く思っていると
「あのさー
いまちょっと、困ってるって奴、うちで面倒見ててさ~」
と言われ、道路のほうをみると
「ちは~。」
と軽トラックの助手席から若者現る。
「うち狭いからさー
こいつのソファーとかベッドとか置けないから、もらってくれる人探してるんだけど、どう?
いらないー?」
もちろん丁重にお断りしましたけど、まったく懲りないAさんなのでした。
隣の土地は借金してでも買え【後日談エピソード3】幕開
そのまた後日の後日談。
先日、夕飯を作っているとなんだか聞き覚えのある音・・・・・。
ボロボロボロ・・・・・
無気力Mが、おんぼろキャデラックとともに、我が家の真裏のアパートに引っ越してきましたとさ。
ちゃんとMは暮らしていけているのか。
Aさんじゃないけど、気になっている今日この頃です。
【 完 】
もう一件の任意売却による中古住宅購入のエピソードも書いています。
こちらはあまりおふざけ無しで、もう少しマジメに書いています。
よかったらこちらもご覧くださいね。