続きの記事になります。
初めての方は、こちらからご覧ください。
その1任意売却で家を購入したら理想の家が建てられるかも【なぜなら私がそうだから】
その2不動産屋へ飛び込みで行って最高にいい物件情報をもらうには?
任意売却のお話です。
任意売却って何?という方はこちらの記事を読んでからご覧ください。
築20年越えの古い中古住宅の購入の検討をしている我が家。
内覧も済ませ、購入する気満々で物件の謄本をチェックしてみると、差し押さえが入っていることが発覚。
住宅買取業者に勤めているので、任意売却案件は得意な取引。
ところが謄本を熟読していくと新たな問題が発覚!
今回の記事では、タイトルの通り私道の持ち分のない取引について書いています。
結論を言ってしまうと、面倒なことはありますが売買することができます。
実際の我が家の取引の流れに沿って、私道の持ち分がない取引について詳しく解説します。
- 私道の持ち分がないってどういうこと?
- 私道を持っていないとどうして困るの?
- 住宅ローンや売買はどうなるの?
- 解決策は?
私道の持ち分がない!新たなトラブル発覚
物件の資料を一通り確認していると、ちょっと困った事が新たにわかりました。
私道の持ち分がない、ということを詳しく説明してみましょう。
ちょっとややこしいですがお付き合いください。
接道は私道の開発道路
縮図とかいい加減ですが、道路と宅地の関係をザックリ書くとこんな感じ。
比較的大きな県道から入る、路地の行き止まりにある家が今回購入を検討している物件です。
この路地っていうのが、『42条1項2号道路』(2号道路)いわゆる『開発道路』なんですね。
開発道路っていうのは、例えばすごく広い土地を、開発業社のAが購入したとします。
そこに6棟の建売住宅を建てようと、購入した土地を整地した後に区画分けして、道路を作るわけです。
このように、開発に伴ってできた道路が開発道路になります。
これがまたややこしくて、開発道路にも公道と私道があるんです。
道路って奥が深くて難しいので、ここでは詳しい説明は省いてしまいますけど、購入を検討している物件の接道は私道の開発道路でした。
この道路を使う人たちそれぞれで道路を所有して管理しましょう、というものです。
けれど現所有者所である売主さんは、この道路の持ち分を持っていなかったんです。
私道の持ち分がないとどういうことになる?
これ実は、結構厄介です。
接道義務と言って、建築物の敷地には『4m以上の幅の道路に2m以上接しなければならない』ということはご存知の方も多いかもしれません。
接道義務を果たしていないと、建築物を建てることができないわけですね。
では接道しているからと言って好き勝手に道路を使っていいか、というとそういうわけではないんです。
公道の場合、道路を塞いだり穴を掘ったりなんて個人で勝手に行うことができませんよね?
これは行政が道路の管理者(所有者)だからです。
同様に、私道の場合も所有者の許可なしに、勝手に物を置いたり掘削したりできないわけです。
許可というのは、口約束だったり、使用料など取り決めを書面に残していたりと色々なパターンがあります。
建築物を建てるということは、重機や関係者の出入り、水道工事などに伴う道路の掘削などが必要です。
つまり、私道の持ち分がないということは、
- 自由に行き来する
- 自宅の建て直し
このようなことができない、ということになります。
そのため、日常的に使用する道路の持ち分がない場合は『通行許可書』や『掘削承諾書』などがあったほうが安心です。
私道トラブル
2019年に長崎で、私道の持ち分がない住民らに対し、生活道路としての『使用料』を払えと所有者が主張するというトラブルがありました。
この件が今後どうなるかわかりませんが、理屈を言うとこのような事態になってもおかしくないわけです。
私道の持ち分がない物件って売買できるの?!
今回の場合は、私道の取り決め書面の類は何もありませんでした。
売主さんに購入当時のことを伺ってみても、どうして私道の持ち分がないかもわからない様子でした。
このまま売買をするなら次の2パターンの準備が必要です。
私道の持ち分がない取引に必要なもの
最低でも次のふたつの許可を、私道の所有者の全員からもらう事。
- 私道を自由に通行する許可
- 私道を自由に掘削する許可
または、私道の一部を買い取る
ではこの私道をだれが持っているのかというと、この路地に建っている家の所有者はもちろん、少し離れたところに住んでいる方もチラホラ。
道路の謄本を見れば持ち主はすぐにわかります。
現状、このように関係ない人も数人いる状態。
承諾書を取るためには、所有者全員に署名捺印してもらわなければなりません。
これって、結構ハードル高いですよね。
ある日突然不動産屋さんが訪ねてきて
「奥の〇〇さんが私道の持ち分がないので、勝手に通行や掘削を今後永久にできるように署名して印鑑押してほしいんですけど。」
と言ってきたとして。
道路や建築のことをよく知らなければ、こんな話ほんとに印鑑押して大丈夫なの?ってなりますよね。
私道の持ち分がない物件はローンが組めない?
私道の持ち分がないということは、取引するうえでもう一つ、とても困ったことがあります。
それは住宅ローンが組めないという事。
このままでは自由に行き来したり、建て直したりができないわけですから、物件としての価値が著しく落ちてしまいます。
実際に、物件の交渉と同時に打診していた銀行には
- 最低でも通行・掘削許可を取る事
- 私道を買い取ることができれば尚よし
これができていなければこれ以上話を進めることはできないと言われました。
私道の持ち分がないなら許可をもらうよりも買い取ったほうがいい?
通行、掘削許可を取ることが難しそうなので、持ち分の一部を買い取る方向で話を進めましょうということになりました。
私道の持ち主のうちの誰か一人が売るなり譲るなりしてくれればいいわけですから。
所有者全員から印鑑をもらうよりも簡単かもしれません。
何しろ、この物件は差し押さえ物件です。
もたもたしていると、競売が始まってしまいます。
私道の買取は売主負担?買主負担?
とにかくこの任意売却を成立させて、競売を回避したい売主さん。
築も古く、大きな倉庫のせいで陰気な建物では、我が家のほかにいつ購入を希望する人が出てくれるかわかりません。
この私道を使っていない人から譲渡交渉をしていくわけですが、相手を知らないのでどんな出方で来るかもわかりません。
使っていないのだから無料で譲りますよ、と言ってくれたら儲けもの。
お金を出してくれるのなら売りますよ、という人もいるでしょうし、訳が分からないからお断り!という人もいるでしょう。
未来のことを契約書に明記して条件にしてもいい
銀行は、本当に取引があるのかわからないような案件に振り回されることをとっても嫌います。
そんなことを売主さんとも相談したうえで、売買の条件に売主負担で私道の買取をお願いすることにしました。
必ず私道を確保したうえで契約する、と約束したうえで銀行には事前審査をしてもらいました。
例えば、もしも私道の譲渡がうまくいかなかったらこの契約は白紙にする、という内容になります。
このように、不動産の取引では双方が納得すれば、未来のことを『条件』という形で契約書に明記することができます。
売主さんのほうの不動産屋さんは、任意売却を専門に扱っている業者でした。
おかげでこの手の問題あり物件には慣れているようで、すんなりと承諾してもらうことができました。
私道の持ち分がない問題は無事クリア!だけど新たな問題が発覚?
売主さん主導で交渉してもらったので、どうやって相手にアプローチしてどういう条件で話がまとまったのかは分かりません。
ですが、こうやって地域の相場よりも安い物件となると
売主さんに早く売りたい事情がある
古い、雨漏り、汚い、残置物が置きっぱなしなど、建物自体に瑕疵(短所)がある
今回のように権利関係の瑕疵がある
など、何かしらの理由があるはずです。
こちらに有利になるよう交渉したり、きちんと調べて問題点をクリアしていけば、かなりお得なお買い物になります。
こうして『私道の持ち分がない問題』はめでたく解決しました。
ところがこの物件、一筋縄ではいきませんでした。
実はまだまだ大きな問題が残されていました。
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